月夜の戯れ言

ラブライブとV系バンドが好きなサラリーマンのブログ

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2nd Live! 『Brand New Story』『Back to the TOKIMEKI』 <無観客有料生配信ライブ>を見ての感想。

■はじめに
 9月の12日、13日に開催された、無観客配信ライブ、『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2nd Live BRAND NEW STORY』及び『同・BACK to the TOKIMEKI』についての感想です。
 ライブの特設サイトはこちら。

 元々はお台場に5月新設された『東京ガーデンシアター』で有観客開催予定でしたが、未だに収束の兆しが見通せないことから、無観客配信で開催されることとなりました。同コンテンツの別ユニットAqoursは、5大ドームツアーが中止となり、配信ライブとして10/10.10/11に開催が決定しています。

 つまり今回の虹学のライブは、ラブライブ初の配信ライブ。
 一体どんなライブになるだろう。直近でリリースされた3rdアルバムの『Just Believe!!!』はとてもよい音源だったし、絶賛配信中のソーシャルゲームのスクスタのストーリーも、とてもいい内容だった。別に記事を作りたいけど、『9人』という人数に拘り続けたラブライブだからこそ、新たに『10人目』として参加したキャラクターの、キャラとしての魅力、役割。これまでのラブライブの物語を背景にして作られたようでいて、これまでにいないキャラクターもとても良かったけど……でも、現地で大勢のファンが詰めかけ、ストーリーを下敷きにした演出や、作中人物たちが作ったという設定の多数の楽曲と共に、大勢で盛り上がる。ライブ終盤では、コンテンツらしく様々な初出の最新情報がお披露目され会場を沸かせ、最後はやはり、最後にふさわしく誰もが納得する楽曲で締められるのがラブライブのライブ。やはり、(ラブライブに限った話じゃないけれど)、『感動(感情)の共有』だと思うので、それが希薄となるオンライン配信ライブはどうなるのか……と思いつつ、期待半分、不安半分で観劇に臨みました。

 結果としては、とてもとても良かった。
 感動は上書きされていくものだけど、かつてのμ'sのライブの時か、それ以上くらい感動し、心に残るライブとなりました。
 どのあたりが良かったのか? 虹学のコンセプトを振り返りつつ、書いてみたいです。


①スクスタのストーリーとの一体化
 いわゆるメインストーリーとなる、前述の10人目──三船栞子が加入するまでの経緯が描かれたこれまでのストーリー。このライブは、その三船栞子が加入した後にすぐ開催したライブ、という設定を持っています。ストーリーと融合するのがラブライブのライブ。幕間のアニメでも、栞子が加入し、その栞子が聴きたい、見たい、という要望をメンバーに伝えることで、加入前の楽曲をメンバーが披露し、深い感動を覚えていく──という流れが、キャラクターとしてもさることながら、演じる声優さんも素直な気持ちとして、その感情をMCで伝えていきます。
 また、個別シナリオとなるキズナエピソードでのストーリーも、各々のソロパートにて、それを下敷きにした演出で、それぞれの楽曲とともに披露されていきます。
 特にいたく感心したのが、天王寺璃奈役である、田中ちえ美さんがDay1 BRAND NEW STORYで披露した『アナログハート』。これは璃奈が、アイドル活動するにあたりファンクラブを作り活動していったが、ごく最初の頃に見に来てくれた人が、割と軌道に乗り、ファンも増えて来た最近は来てくれない……そんな悩みを抱えた璃奈が、主人公となる『あなた』と相談し、その人たちのために、オンラインライブをやるという、まるで先を見たかのような展開により届けられる曲です。スクスタのシナリオ上では楽曲を歌う描写は省略されているのですが、(全体的に他もそういう演出手法)そのライブが、ここ2ndライブので披露されている。その構成にいたく感心し、感動してしまいました。
 また、コンテンツの企画の一環として、人気投票1位を獲得した中須かすみ(CV:相良 茉優)のみ獲得した個人曲、無敵級ビリーバーの披露と、その後の幕間アニメで、仲間から口々に努力を讃えられるシーンも、企画がストーリーの一環となっているいい例で、『ストーリーとの一体化』をより強調していたと思います。
 それぞれのソロ曲や、ユニット曲が披露された後に、個別に特別な演出を持ち、三船栞子役の小泉萌香さんが登場し、『決意の光』を歌ったのも、細々とした部分は、リアルライブで説明する必要はないので端折りつつもw大枠としての構成として、後から10人目として加入したことを表現し、他メンバー達も、パフォーマンスを讃え、受け入れていく。そういう演出をしていたのも(演出だけでなく、実際にこれから一緒に活躍していく仲間でもあるので、演出でなく率直な気持ちでもある)
 個々のキズナエピソードがどこまでライブというフィールドでの楽曲に反映されているのか、どれぐらいストーリーとしての意味を持つのかは、それぞれ差があるのですが、エマ・ヴェルデ役の、指出 毬亜さんが披露した『哀温ノ詩』は、スクスタのストーリーを表すものより、それ以上のものを感じさせる内容でした。


②クオリティが高い!
 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会はソロ活動が主体と強調されています。9人曲の多かったμ's。輪をかけて多かったAqoursとは対称的。結果ライブで披露される曲数に差はなくとも、メンバーそれぞれが歌う楽曲数には大きな差があります。つまり一点集中で、『一人と一曲』という方向性において、完成度がとても高いです。練習の賜物かつ素質によるためか、それぞれ歌唱力も高く、ダンス(というより、楽曲の世界観を表す振りであることも多い)もこなし、ソロという誤魔化しのきかないフィールドで、全く不足ない歌唱を見せてくれるのは、1stライブのBDや、ラブライブ!フェスで目撃した通りでしたが、今回の2ndは輪を駆けて高かったと思いました。
 ニジガクは、元来そういう方向性。ぱっと盛り上がってわっと叫んで、いっぱい汗を流して気分爽快、というライブではなく、楽曲の世界観や、パフォーマンスをじっくりと鑑賞するコンセプトですが、より際立っていましたね。
 無観客によりカメラが自由に活動できるのも拍車をかけていたでしょう。声優・楽曲世界観・歌唱やダンスの3すくみによりアーティストのするライブに昇華していたな、という印象でした。
 ユニット曲での、2人組として。3人トリオとして。そして4人組としてのパフォーマンスや、特に4人組たるQu4tzは、4人の歌声のハーモニーが素晴らしかった。
 また、今回のライブの深奥というか、コアのような楽曲として、エマ・ヴェルデ役の、指出 毬亜さんが披露した『哀温ノ詩』があると思いました。
 エマが持っているストーリーに即した形で、いわゆる花魁の衣装で登場した指出さんは、エマ役として。楽曲の担い手として。虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の一員として。のみならず、花魁という職業も、楽曲の世界に乗せて表しているようでした。花魁とラブライブは直接関係ない要素ですが、そこまで表してなお、スクスタのストーリーの一部分として帰結していく。何も無軌道に表現を極めているのではなく、きちんとストーリーに帰結していき、ラブライブに戻していくのが、とても計算されている……と思わされました。
 特に大サビの「もしあなたの心この詩で 救えているのならば・・・」のところ、指出さんは階段に寝そべりながら歌う。多分おそらく、寝ている花魁が表している事象はただ一つだと思うのですが、それが「救い」であると表すのはとても深いです。相手にとって何らかの救いとなっても、花魁自身は救われない。でも「同じように誰かの痛みも いつか導いてほしい」と祈るのが、救われない……でも、だからこそ祈りたくなる。エマ・ヴェルデの特徴は『癒し』だけど、その癒しは本来はノーリスクではないけど、ラブライブ上ではノーリスクできっと描かれる。だけど、そうでないリスクある癒しを演じた指出さんは凄いし、演じさせたプランナーも凄いですね。特にクオリティが高いと思わされる楽曲でした。


③細かいところが色々と好き
お前全くコンセプトに沿ってないじゃないかという指摘はごもっともです。
でも細々とした個性的なところがいい……って気持ち、オタクにはあります。
箇条書きで列挙してみます。

・『BRAND NEW STORY』と『BACK to the TOKIMEKI』とサブタイトルを分け、セットリストをがらっと変えている
初日のBRAND NEW~は、全てが新曲で構成されたライブ。対するBACK to~は、1stアルバムの曲をフルコーラスで専用衣装で披露し、既に代名詞的曲の『TOKIMEKIRunners』を最初と最後に二度披露する、まるで1stライブのような構成。まさにBACK to the TOKIMEkI。徹底したコンセプトもさることながら、事前にある程度、セットリストが予想つくのも良かったと思います。「あの曲が聴きたかったのに、なんでやってくれないの!?」という発信側と受信側の相互不理解も防げると思いました。

・意外なほど色々なことを喋ってくれるMC
実に言葉が少なめだったμ's。徹頭徹尾チームとしての発言のみ終始するAqoursに対し、練習時のことや、失敗したこと。思ったこと。感じたことなど、雑多な所感や、お互いのパフォーマンスを讃え認めあい、誉め合うくすぐったい会話や。意外なほど互いのミスにも言及し、指摘しつつ振り返り、励まし合ったり、いじったりする、極めて個性的なMCが特徴的でした。仲間でありライバルでもあるのが虹学。これまでのラブライブで描かれてきたチーム感とは異なるものが、これから先描かれていくことの、その一端なのかな……などと拡大解釈したりしました。(もともと拡大解釈しかしないのですが)

・大きなモニターで映されるスクスタMVの「後ろで見守ってくれてる感」による安心感
 スクスタ……俺、やっぱりお前のこと……。

・シンプルで伝わりやすいARによる演出の強化
 やがてひとつの物語での『本』
 アナログハートでの『ハート』
 哀温ノ詩での『紅葉』
 なんならライブで定番の銀テープもAR演出。
 俺は演出のプロだぜ。

・無観客だからこそ、カメラがステージに上がることも可能であり、MVとシンクロした表現に留まらず、ステージ上でMVを(実写作品として)改めて撮り直している、といえるくらい、完成度の高いカメラアングル
 Day1夜の部で、『ある曲』にてキャストさんを舐めるように撮っていったカメラがあった。
 μ's4thライブでも、ある曲にてあるキャストを舐めるように撮ったライヴュカメラがあったけど、まさか?

・『スペシャルステージ』と称されたアンコールのラスト曲の舞台
 無観客配信であることを生かし、東京ガーデンシアターのアリーナでラスト曲を披露。スクスタのメインストーリーの最終話手前のライブが『スペシャルステージ』と命名されて、新たな曲が解禁されるのを彷彿とさせます。

・幕間アニメに『意味』がある
 意味不明だったAqoursがある意味で異常だったのだけど・・・。
 舞台裏のシーンである設定から、メンバーのパフォーマンスを讃え、水を飲んだり、これまでの経緯や、これからのことを語り合うシーンとなり、その後のライブの展開にも大いに影響を与えるパートです。

・等々、良い場所は枚挙に暇がない
 また発見したら追記していきます。
 (今はリピート放送前。放送後はまたきっと新しい発見があると思います)


■おわりに
 長々と書き綴ってきましたが、コンセプトに基づいて、現状で用意されている楽曲を、最良の演出と構成。そして意味を持たせて披露させたことで、無観客配信というハンデを払拭し、むしろプラスに転換したように、素晴らしい完成度のライブでした。
 各楽曲のMVと、キャストのMCを一挙に(生放送で)見られるという視聴感で、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会と相性良かったと思いました。
 μ's3rdライブ以降は、完成度というよりむしろコンテンツの持つ勢いで押し切っていくようなところがあったラブライブのライブですが、Aqours4thライブが浦の星交響楽団の助力を借り、どちらかというと聴かせる曲で構成し、完成度を高めたライブを作り出したように、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2ndライブは、無観客配信という状況をプラスに変え、もともと高い完成度をほこったはずのライブのそれを、より極大化したようなライブだったと思います。
 最後のお知らせでは待望のアニメ放送の詳細と、紹介動画も初披露され、やはりラブライブらしく、勢いを作り出し幕引きしたのも、伝統的で、あとはアニメを待つだけ……みたいな気持ちです。

 願わくばアニメが賛否両論なく、誰にも肯定され、愛されるものに仕上がっていますよう。
 その祈りを締めの言葉に変え、感想を終わりにしたいと思います。